よくよせられる相談 -医療・保険-

当センターによく寄せられる質問をまとめました。

任意継続健康保険

相談

15年前から働いていた工場が、とうとう来月末で閉鎖されることになり、多くの従業員が日本人・日系人の区別なく解雇を予告されました。 長いあいだ派遣会社を通じて雇用されていましたが、3年前に直接雇用に切り変えてもらう事ができ、それと同時に社会保険にも初めて入りました。「これで日本での生活が安定した」と家族と共に喜んだことがまるで昨日のようです。子供たちは日本の学校しか通ってないので、ブラジルへ帰国する選択肢は考えられず、このまま日本で再就職先を探すつもりです。
健康保険について質問ですが、会社の担当者から「任意継続を申請しますか?」と尋ねられました。私としては、失業後も社会保険料を払い続けるのは大変ですし、まして会社が半分払っていた分まで個人で負担することは不可能だと思います。それとも、国民健康保険に比べて何かメリットがあるのでしょうか。任意継続健康保険とはどんな保険ですか。

対応

国民健康保険は前年度所得を基礎にして保険料を算定しています。したがって、失業して収入がないにもかかわらず、在職時の収入で保険料の負担をしなくてはならないのです。通常、健康保険(社保)は勤労者が加入しておりますから加入者の平均年齢が国保よりも低く、保険料は国保よりも安くなっています。そこで、2年間だけ社険の被保険者としての資格を延長できる制度が作られました。
ただし、任意継続の保険料は、事業主負担がありませんから、その分もご自分で負担しなくてはなりません。 しかし、その保険料額は、算定基準となる標準報酬月額28万円を限度としているので、多くても3万円程度の保険料負担ですむはずです。また、任意継続健康保険には被扶養者の制度があることが国保と比べた場合のメリットといえるでしょう。したがって、任意継続に加入されるかどうかは、お住まいの市区町村の国保担当課で試算してもらい、任意継続との比較をされてから判断をされたほうがよいでしょう。 なお、国民健康保険に加入する、または健康保険の被扶養者になるためという理由等で勝手にやめることはできないので注意しましょう。

任意継続被保険者となるための主な要件
(1) 資格喪失日の前日までに「継続して2ヶ月以上の被保険者期間」があること。
(2) 資格喪失日から「20日以内」に申請すること。

詳しくは、管轄の全国健康保険協会の都道府県支部にお問い合わせください。


社会保険(被扶養者の範囲)

相談

12年前に来日し、主に電子部品の製造工場で働いてきました。日系人専門の派遣会社に雇用された形での間接雇用であり、これまで社会保険等には加入していませんでした。我が家には中学生以下の子が3人おり、以前から社会保険の加入を派遣会社に要望し続けていたのですが、会社の意向以外にも保険料が高いと反対する単身者も多く、そのため日系人従業員は全員が未加入でした。しかし時勢の影響か、派遣会社もやっと今月から社会保険に加入する手続きをとることになり、加入希望者のみに対して会社から申請書類の提出を求められました。 
こうした状況のもとで、被扶養者の名前を記入する用紙を渡された私は、扶養家族4人とブラジルに住む両親および娘(18歳・学生・前妻との子)の氏名等を書いて提出しました。ブラジルの両親へ定期的に生活費を送金しており、娘の養育費も毎月払っているので当然扶養が認められると思いました。ところが、担当者から「海外に住んでいるから被扶養者に該当しない」と書き直しを命じられました。所得税の扶養控除などには認められている家族なのに何故だめなのですか。

対応

社会保険制度における被扶養者の範囲をみると、ブラジルに住むあなたのご家族は同居の有無にかかわりなく被扶養者として認められる親族に該当します。従って会社の担当の方にもういちど被扶養の確認をお願いして下さい。社会保険庁のホームページなどにも被扶養者の範囲や条件が掲載されていますのでご覧下さい。 
ただし、健康保険の被扶養者になった場合でも、外国で支払った医療費が日本で給付を認められない場合があります。海外療養費の給付は特例であるため、支給するしないは審査官の裁量に任されているそうです。 詳しくは、管轄の全国健康保険協会の都道府県支部にお問い合わせください。


社会保険

相談

社会保険とはどのような保険でしょうか。

対応

日本では、会社や工場等に雇用されている人は社会保険(健康保険、厚生年金保険)の加入が義務付けられており、収入に応じて就労者と雇用主が折半して保険料を支払います。この制度は相互扶助のもと、病気や怪我をしたときや老後の生活に備えるもので、いざというときに医療や年金・一時金の給付を受けることによって生活が困らないようにしているものです。仕事以外で、大怪我をしたり大きな病気になったときなどに、医療費の負担が少なくてすみます。医療費のほかに支給される主な保険給付は、傷病手当金、高額療養費、配偶者出産育児一時金、死亡したときの埋葬料などがあります。保険の対象は本人だけでなく配偶者、子供たち等の被扶養者についても一部の保険給付が認められています。
また、厚生年金保険に加入している外国人には、日本を出国してから2年以内に請求することによって掛け金の一部が還付される制度(脱退一時金制度)があります。
社会保険や年金について詳しいことは最寄の社会保険事務所に相談してください。


国民健康保険

相談

国民健康保険とはどのような保険ですか。

対応

市町村の国民健康保険は農業や自営業、無職の人などを対象とする保険制度です。被保険者(保険加入者)が支払う保険料額は市町村によって異なります。国民健康保険料は加入したときから保険料を納めることになり、転入したときは、その市区町村に住み始めた日から14日以内に市区町村役場で手続きする必要があります。会社などで働いている人は社会保険に加入するため義務があるため、自治体によっては国民健康保険への加入を認めないケースもあります。国民健康保険は被扶養者の概念がなく、家族で加入した場合、家族全員が被保険者となり、加入者数に応じた保険料が計算されます。保険料の支払いは自分で行います。給付は、療養の給付、高額療養費、出産育児一時金など健康保険の給付とほぼ同じですが、疾病手当金、被保険者の出産手当金などの制度はありません。
国民健康保険についての詳しいことは、居住地の市区町村役場の国民健康保険の窓口でお聞きください。


妊娠・出産関係

相談

妊娠をしたようなのですが、出産に必要な手続や費用に関していろいろ教えて下さい。

対応

医療機関を受診し妊娠を確認したら、住んでいる(外国人登録をしている)市区町村へ「妊娠届」を提出しましょう。受付窓口に用意されている妊娠届出書を利用するか又は、産婦人科で医師の署名の入った届出書をくれるところもありますので確認しましょう。届出は本人以外に家族でも代理できますが、妊娠週数、予定日、妊娠回数、医師名などの情報が必要です。妊娠届を提出すると母子健康手帳が交付され、それと同時に妊娠・出産に関する行政サービスの一連の書類等が渡されます。そのサービス内容は、市区町村によって様々ですが、妊婦検診などが無料で受けられるようになっています。
出産費用の一部をまかなってくれる「出産育児一時金」については、健康保険に加入または被扶養者になって妊娠4カ月以上で出産した場合に支給されます。全国健康保険協会管掌健康保険の場合は1児につき39万円ですが、通常これに産科医療補償制度の保険料の3万円が加算されて42万円が受け取れます。勤務先の健康保険あるいは国民健康保険でも自治体によっては、「付加給付」がついて42万円+αが給付される場合もあります。妊娠・出産に伴う定期健診や正常分娩には、健康保険が適用されませんので各種助成金・給付金を上手に利用するようにしましょう。
昨年から始まった直接支払制度により、出産を予定している病院や産院で手続きすることにより出産育児一時金が医療機関へ直接支払われます。ただし一部適用されない医療機関もありますので事前確認が必要です。
あなたが社会保険に加入しているご主人の被扶養者である場合、健康保険被保険者(家族)出産育児一時金請求書は妊娠中に書類を受け取り、記入事項に医師や助産師の証明が必要なので入院中に書いてもらうとよいでしょう。手続についてはご主人が勤めている会社を通じて行うのが一般的です。なお、出産費用が出産育児一時金の支給額を超えた場合には、個人が医療機関等に差額分を支払います。また、範囲内であった場合には、その差額分を出産後、協会けんぽに請求できます。出産育児一時金が医療機関等に直接支払われないやりかたも可能です。
この他にも、出産予定日まで1ヶ月以内の方に対して医療機関に支払う当座の資金として出産育児一時金が給付されるまでのあいだ無利子で貸付する出産費貸付制度もあり、申込み先は協会けんぽです。

<出産手当金>

あなたが被保険者であり、出産のため会社を休み、事業主から報酬が受けられないときは、出産手当金が支給されます。これは、被保険者や家族の生活を保障し、安心して出産前後の休養ができるようにするために設けられている制度です。なお、任意継続被保険者の方は、出産手当金は支給されません。
出産手当金が受けられる期間: 出産手当金は、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産の予定日)以前42日目(多胎妊娠の場合は98日目)から、出産の日の翌日以後56日目までの範囲内で会社を休んだ期間について支給されます。ただし、休んだ期間にかかる分として、出産手当金の額より多い報酬が支給される場合は、出産手当金は支給されません。
なお、国民健康保険には出産手当金の制度はありません。


雇用保険・離職票

相談

直接雇用で7年間勤め、このたび解雇されました。失業保険を受給するための解雇証明や失業保険給付を受けるために必要な書類を会社に要求していますがくれません。どうすればよいでしょうか。(ブラジル・男性・3世)

対応

雇用保険は、労働者が失業した場合などに必要な給付を行い、労働者が再就職するまでの生活及び雇用の安定を図ると共に再就職の援助をを行うなどを目的とした雇用に関する総合的な機能を持った制度です。一人でも雇用している使用者(会社・事業所)は、適用基準を満たす労働者について、使用者や労働者の意志に関係なく加入(被保険者となった旨をハローワーク=公共職業安定所へ届出)しなければならないことになっています。
そこで、あなたの場合、雇用保険被保険者証等を受取っておられないようですので、会社に再度、離職票等の書類を渡していただくよう依頼して下さい。それでももらえない場合は、案内したハローワークで相談して下さい。この場合、適用条件の一つである「離職日以前の1年間に6ヵ月以上雇用保険に加入していること」を、給与明細等で保険料を支払っていたかによって確認できます。若し支払いの事実が確認できないときでも、雇用保険の遡及加入制度もありますので、そのことも含め相談されたらいかがでしょうか。


労災保険(職場でのケガ)

相談

去年の暮れに職場で転倒し膝を負傷しました。数日間入院し、その間の治療費や休業補償は会社から支給されました。今日、リハビリに訪れた病院で医師から手術が必要だと告げられました。ケガから一ヶ月が過ぎていますが、労災保険でこの費用を払ってもらえるでしょうか。
ところで、労災保険の補償はどこが払ってくれるのですか?仕組みがわからないので説明してください。

対応

あなたの場合は先ず、その手術が労災保険の対象になり得るか否かは医師に説明を求めてください。それは、業務上の災害により負ったケガとの因果関係など医師の診断が重要だからです。そして、労働災害との関連が医師より確認されれば、労働基準監督署へ申請手続をします。


労災保険(労働者災害補償保険)とは、労働者が業務上や通勤途中の災害によりケガ・病気・死亡したときに、事業主に代わって補償を行う国の保険制度です。労働者を雇用する全ての事業主に加入が義務付けられており、保険料は事業主が全額負担します。
この保険では、療養給付(病院等の支払いおよび治療等に要した費用)について労災保険の指定医療機関で治療をうけた場合(診察時に業務上の事故である旨を話す)は直接病院へ支払われますが、やむを得ない理由により指定外の病院で治療を受けた場合は、療養費をいったん本人が立替えます。
立替えた療養費や休業給付(療養中賃金を受けない期間の生活を補償するもの)などの請求はすべて労働基準監督署へそれぞれの規定に従い請求書を提出します。この請求にもとづき審査が行われ、その請求額内で政府が必要と認めた額が金融機関等への振込みで本人へ給付されます。
なお詳しくは、ポルトガル語通訳のいる労働基準監督署をご案内しますので、そちらでお聞き下さい。


労災保険(職場でのケガ)

相談

私は請負会社に雇用されて食品製造工場で働いています。先日、工場の敷地内で雪に足をとられて転倒し、肩を傷めて1週間自宅療養をしていました。病院の費用などは全額会社が払ってくれましたが休業中の賃金は支給されませんでした。所属する会社は私のように日系外国人が多く働いており、社会保険への加入はありません。その代わりに、保険料の安い民間会社の保険(旅行者保険と思われる)への加入がほぼ全員に義務づけられています。私もこの保険料を払っており、今回の事故の治療費はこの保険から支払われたと聞きました。
自分の不注意で起きた事故なので休業補償はあきらめろと上司に言われましたが、その元は通常とは違う作業を命じた上司にも責任があると思うので納得いきません。そこで、休業補償および自分が加入している民間保険で払われた治療費を労災保険へ請求したいと思いますが、これらは給付されるでしょうか。

対応

事業主が労災保険に加入していないから、自分は労災保険で治療等を受ける事はできないのではないか考えたそうですが、事業主の加入状況にかかわらず、被災労働者は労災保険で治療が受けられます。政府は事業主が保険料の支払いを怠っていたということで、事業主から費用を徴収します。
自分の不注意や上司の責任にかかわりなく、職務中の事故であり、それらに特別重大な過失がなければ(あなたの場合はないと思います)労災保険からの給付は受けられるでしょう。ただし、任意の保険から既に支払われた治療費については労働基準監督署に詳細を問い合わせてください(一応、任意の保険に関係なく支給されることになっているそうですが、領収書等の問題あり)。
今回は幸い大事に至らなかったそうですが、場合によっては年金給付に発展するような重大な事故もあり、労災保険以外の保険では十分な補償が得られないことがあります。そのため、初めて診察を受ける時に業務上の災害であることを医療機関等に告げ、労災保険の請求をすることをお勧めします。


傷病手当金

相談

私は病気のため1ヵ月前から入院しています。欠勤した日については給与が支給されておりません。このような場合、健康保険から傷病手当金が支給されると聞きましたが、詳しく教えて下さい。(ブラジル・男性・2世)

対応

健康保険では、業務外の病気やケガのために仕事を休み、給料を受けられないとき、または給料が減少したときには、被保険者の生活の安定を図るために傷病手当金が支給されます。次に支給要件等を説明します。

1 支給要件(次の要件を満たすことが必要です。)

1) 療養のため仕事に就けないこと
2) 4日以上仕事を休んでいること(連続して3日休んだ日の4日目から支給)
3) 給与の支払いがないか、少なくなったとき

2 支給額

1日につき標準報酬日額の6割が支給されます。給与の一部が支給されている場合で給与より傷病手当金の額が多いときにはその差額が支給されます。


3 支給期間

同一の病気やケガについて支給を開始した日から1年6ヵ月の期間となります。この期間は暦日数です。

4 資格喪失後の支給

被保険者期間が継続して1年以上ある人が、資格喪失の際に傷病手当金を受けているか、または受けられる状態にあるときは、資格喪失後も傷病手当金を受けられます。


5 支給調整

傷病手当金を受けられる期間に、次のものを受けた場合は、傷病手当金は支給されません。なお、日系人には、下記1)と3)に該当する方はおられないと思います。

1) 同一の傷病により、障害厚生年金・障害基礎年金・障害手当金を受けている場合(支給される年金の額が、傷病手当金の額を下回るときは、その差額が支給される)。
2) 出産手当金を受けている場合(傷病手当金を受けた場合は、出産手当金の内払いと見なされる)。
3) 任意継続被保険者及び資格喪失後継続して傷病手当金を受けている人が、老齢厚生年金、老齢基礎連金、退職共済年金を受けた場合(ただし、支給される年金の額が傷病手当金の額を下回るときは、その差額を傷病手当金として支給される)。


その他の相談事例

1 生活相談・情報・通訳
2 運転免許証・警察・交通事故
3 医療・保険
4 労働問題
5 査証・在留資格
6 日本語学習・教育・就学・研修・奨学金
7 年金・税金
8 帰国